2012年4月11日水曜日

ドラム缶 - Wikipedia


ドラム缶(ドラムかん、英語:(steel) drum)とは200リットル以上の大型の金属製の缶のこと。特注品でない限り鋼鉄で作られる。ガソリン、灯油のような燃料油や塗料、溶剤、化学薬品、医薬原料などの工業材料とその製品といった液体を入れて運搬・貯蔵に用いられる。

[編集] 構造と特徴

一般的なドラム缶には、円筒部の中間に輪帯(りんたい)と呼ばれる2本の出っ張りがある(上の画像のドラム缶では色の塗り分けの境界部分)。これは構造上の補強の役割を持つと同時に、転がして運搬する際には車輪(出っ張りの部分だけが接地面となる)の役割を果たし、容易に転がせる作用がある。輪帯は、鋼板を筒状に曲げて、繋いだ後に、内側から一気に打ち出すように力を加えて成形される。

1900年にヨーロッパで金属製の樽が登場し、1902年にアメリカ合衆国のスタンダード・オイルがこれを大量生産して使用を始めた。当時はまだ中身が漏れることが多かったようである。

翌1903年には、おなじく米国のコークラン・シーマン夫人によって現在とほぼ同じ金属容器が発明され中身の漏れは改善された。これは、胴体部のまっすぐな55ガロン(約204リットル)入りのドラム缶であり、これが改良を重ねられて現在のドラム缶になっている。


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日本での最初のドラム缶の製造は、1927年に小倉石油東京製油所と秋田県永井製油所でアスファルト向けのドラム缶が作られたのが最初である。この当時は、国内製の一斗缶以外では、海外からの輸入油の容器としてのドラム缶が他の用途にも再使用されてはいたが、国内でのドラム缶の製造はこれが最初であった。

1929年には日本石油が米国から製缶機を輸入して、翌年からは山口県下松製油所で大量生産したドラム缶の自社使用をはじめた。これが200リットル入りドラム缶の日本での最初の量産であった[1]

日本ではJIS規格により大きさや寸法が定められている。大さは5種類。一般にガソリンスタンドなどで見かけるドラム缶は、その中で最も一般的なもの。容量は200リットル、直径が約0.6m、高さが約0.9mである。業界では18リットル以上200リットル未満のものは中小型缶とよび、200リットル以上のものの呼称であるドラム缶と区別している。海外では200リットルに相当する44ガロン缶の他、220リットルなど別のサイズのものもある。海外ではドラム缶を専門の製缶業者から買わずに、自社で製造して使用する企業もあるため、種類・サイズも多様となりやすい。200リットルドラムは20フィートの海上コンテナに通常80本積載可能である。


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ドラム缶には上下に円形で平面の部分があり、上になる方がバンドで締め付けられており、これを外すと大きく開けられるオープンドラム(ペール缶)と、巻き締めてあり切り取らないと開かないタイトヘッドドラムの2種類がある。オープンドラムの蓋は天蓋と称する。また、タイトヘッドドラムには別途螺子付きの注入口や空気穴にセットする小さな蓋が付いていることも多く、これはプラグと称している。プラグは鉄製のプレス成型のものが一般的で、日本では亜鉛ダイカストのものもあったが、2007年に製造中止となった。ほかに、天然樹脂を入れるタイトヘッドドラムには、製品検査に使う丸い穴を天蓋に開け、さらに蓋を取り付けたドラムも存在する。

[編集] 複合ドラム

腐食性のある液体化学品を収納する場合などに対応するため、鋼製のドラムの内側に、ポリエチレンなどの合成樹脂で作った内層容器を入れた、ケミカルドラムと呼ばれる複合ドラムも作られている。

海上輸送、航空輸送などで、危険物を収納して運搬するドラム缶は、UN認証を受けていることが求められる。固形物と液体を収納する場合では規格が異なるので、使い分けることも必要となる。UNの認証が取れていることを示す表示を行う必要があるほか、実際に輸送する際には容器証明書を製造者から取り寄せる必要がある。


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使用サイクル

油槽所や給油所から配送されたドラム缶は需要家によって中身が消費された後、同じ配送ルートによって油槽所や給油所へと回収される。回収されたドラム缶は「更生業者」と呼ばれる専門業者へと送られる。

更生業者

ドラム缶の更生業者では、届けられたドラム缶を、変形や破損の程度の大きなものはスクラップとして処分するものと、更生して再使用するものとに分ける。

以下に更生処理の手順を示す。


  1. 大栓をはずして内部の残油を廃油槽へ出す。
  2. チャイムに歪みがあれば、手動機械で修正する。
  3. 天地の縁を油圧機械で一度で真円になるように修正する。
  4. 油圧機械で天板と地板を押さえ、大栓から高圧空気を吹き込む。この状態でドラム缶を回転させながらローラーで胴板の歪みを直す。
  5. 外部洗浄を行なう。
  6. 逆さにして、洗剤、塩酸、苛性ソーダや水を順番に噴霧し内部洗浄を行なう。
  7. 水槽に沈めて漏れが無いか、気密テストを行なう。
  8. 真空ポンプで内部の水を抜き取り、内部にランプを入れて錆びや油脂などを探す。
    1. 必要なら錆びや油脂の洗浄を行なう。
  9. 高温の乾燥炉に入れて内部を乾燥させる。
  10. 冷風を吹き入れて冷やす。
  11. 内部検査を行なう。
  12. プラグを付ける。
  13. 必要に応じて以下の再塗装を行なう。
    1. ショットブラストによって外部研磨を行う。
    2. 自動塗装機で外部を塗装する
    3. 乾燥機で乾燥させる。
  14. 更生作業を終えて、使用者の元へと送られる。

使用されたドラム缶はこうして何度も再使用され3年程度の寿命を持つ。 洗浄と再塗装費に1キロリットル当り3,000-4,000円程度かかるので、タンクローリーによる配送方法に比べれば、コスト負担は大きい。 [1]


使用後の缶は解体してリサイクルするほか、産業廃棄物等を詰めて保管したりゴミ箱にしたりする、五右衛門風呂を模して浴槽にする(ドラム缶風呂)、運動会で応援団が太鼓として用いる、燻製作りの窯やバーベキューの炉、簡易焼却炉にするなど、二次的な利用が幅広く行われる。海外では、胴板を平らに伸ばしてトタン板代わりにして建築に使う例もある。

打楽器のスティールドラムは廃ドラム缶の底面を太鼓に見立てて使用したのが始まりとされ、底面に大小のくぼみをつけて、音階がでるように加工されている。現在は必ずしもドラム缶から作られるとは限らない。


[編集] 関連項目

  1. ^ a b c 著者表記なし 『知っていますか石油の話』 化学工業日報社 1997年2月14日改訂第5版発行 ISBN 4-87326-235-6

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