持ってきた服の中では高価な部類に入るシャツを洗濯機で洗ったら、つんつくつんに縮んだ。日本では洗濯機で洗っていたのに、ドイツ製洗濯機はそんなに強力なのか。シャツの表示を見ると、確かに「洗濯機の使用は避けてください」とある。ほかにもあるんだな、洗濯機禁止のシャツが。というわけで、初めてドライクリーニングの店へ。
2枚、2500円。高いよねえ。明日の正午過ぎにはできるという。「急いでないから、ゆっくりでいいから、安くならないのか」というと、それが通常のコースで、「特急」ではないという。と言っても、うまく言いくるめられたんじゃないかという疑念が渦を巻く。会計をして店を出てから、店のガラスに顔をくっつけて、クリーニングを終えて店内に掛かっている� ��かの客のシャツのクリーニング価格を調査。同じくらいか、それ以上の値段だ。言いくるめられたわけではない、と自分を納得させる。
クリーニング伝票には、シャツのブランド、形状、色などがコンピューターで打ち出されている。あの短い時間で、たいしたもんだ。でも、「急行」の略のような綴りが…。「急行、ではない」と書いてあるような気もする。どっちなんだ?
国立歴史博物館へ。18世紀初めのピョートル一世のそりに歴史を感じる。1908年に複製されたというエカテリーナ二世と宮廷内の様子を模した像は、無彩色のリヤドロのようで美しい。帰り際に日本語のオーディオガイドがあることを発見。
トゥヴェルスカヤ通りから脇に入るカメルゲルスキー横町には各国料理の店が並ぶ。中華料理店「� �レーヴニィ・キターイ」で昆布サラダと水ギョーザ。これよこれ、このごま油。その香りと味に、一息つく。
<本日の物価、P=ルーブル、1ルーブルは4-5円>
シャツ2枚クリーニング代 500P
国立歴史博物館入場料(学生料金) 80P
中華料理店で昆布サラダと水ギョーザなど 200P
スーパーでバナナ2本 13.19P
同 みかん3個 15.48P
同 ミネラルウオーター(500ml) 8.8P
ショッピングセンターで野菜焼きパスタとコーラ 214P
コメルサント 16P
無性にポテトチップスを食べたくなってスーパーへ。カルビーはなくても、あの筒型の万国共通のポテチはあるだろう、と思ったら、ない。別のスーパーにはあったのに。売り場を占拠しているのは「Lay's」というブランドの袋入りポテチ。ロシア語ではないので、どこかの国のメーカーなのだろう。うすしお味はどれなのか。ない。のりしおも当然ない。あったのは3種類。「サワークリームと青物野菜味」「長ネギ味」「カニ味」。んー…。
「サワークリーム-」をよく見ようと袋を引っ張ったら封が開いてしまい、買わざるを得ないハメに。どうせなら、と、3種類とも買ってみた。「カニ味」がコンソメ味にも似て、安心感のある味。「長ネギ味」はこれもありかな、という新鮮さが魅力。「サワークリー� �と青物野菜味」は、サワークリームの酸味があまりに微妙。
ポテチの袋の帯に印刷されている写真によると、多分、デジタルカメラかパソコンのフラッシュメモリーがあたるキャンペーンを実施中。「青ネギ味」の袋に、「2つとない番号」とロシア語で添え書きされた番号を太字で印刷した紙が入っていた。なにかが当たっている予感。でも、携帯電話のサイトでどったらこったらと書いてあって、手に負えない。結果は後日。
急に寒くなった。大学構内でバスを待つ間、体が冷えた。真冬用のコートをモスクワで買おうと思ったが、これというものがまだ見つからない。とりあえずは日本から送ってもらうことにした。何日かかるだろう? これまた結果は後日。
<本日の物価、P=ルーブル、1ルーブルは4-5円>
学食でライス、サラダ、鶏肉の竜田揚げなどランチ 169P
バス回数券(5回) 70P
コメルサント 16P
クレムリン近くにギターをメーンとした楽器店2店を発見。主流はガットギター、スペイン製。安いものもあるが、まあ6万円から十数万円までというところ。安価なギターではチェコ、ルーマニア、ブルガリア製などがある。ガットギターはもちろんだが、フォーク、アコースティックギターは中国製、韓国製が多い。インドネシア製もある。値段はピンキリ。サンクト・ペテルブルク製7500円って、本当に鳴るの?
YAMAHAのギターが、店のショーウインドーに。高級品の証なの? でも、表面が割れて木地が見えている。放置されているという印象もなくはない。店内のショーケースにビートルズの写真と年代物のギター。表面のサインは「John Lennon」と読める。本物? 弦は1セットお� �むね1200円から。
客と従業員がギターの試し弾きをしている。ガットもフォークもエレキも。街角でギターを弾いて歌っている若者はいるが、じっくりとギターの音を聴くのは久しぶり。しびれた。
チック・コリアがモスクワで公演。なぜモスクワでジャズを聴かなければならないのか説明できず、会場行きを見送る。
朝、キオスクで新聞コメルサントと、週間テレビプログラムが載ったコムソモリスカヤ・プラウダを買う。きのうの新聞より安いじゃないか。
<本日の物価、P=ルーブル、1ルーブルは4-5円>
ロシア料理店でペリメニとボルシチなど 200P
コメルサントとコムソモリスカヤプラウダ 25P
マックカフェでホットチョコレート 85P
東京で言えば新宿御苑。モスクワ郊外、クレムリンの南側のモスクワ川沿いに広がる自然公園カローメンスコエを散策する。歴代の皇帝が別荘を構えた地。ヴォズネセーニエ教会(1532年)は世界文化遺産。カザン聖母教会(1650年)やピョートル1世の小屋(1702年)など歴史的な建物も見応えがあるが、それ以上に、静かな緑の中を歩く穏やかさがいい。
樹木の種類はよく分からない。だが、ポプラのような木が青空に向かって立ち上がり、ミズナラのような木が森をつくる。きれいな楓の落ち葉を集めて歩く親子連れがいる。アノラックを着た赤ちゃんが、若いパパとママと芝生の上でボール遊びをしている。観光馬車がゆっくりと行く。
モスクワに来て最初の週末、どこへ出かけたらいいかとロ� ��ア人に聞いたら、薦めてくれたのがカローメンスコエだった。そのときはモスクワ中心部からやや距離があること、天気が良くなかったことなどで見送ったが、モスクワっ子自慢の自然公園、むべなるかな。
トゥヴェルスカヤ通りに「Wi-Fi Zone」と書いたカフェがあったので、マックカフェと同じく当然無料と思って入ったら、有料。近所のスーパーで一週間のテレビプログラムが載った新聞の中で一番安い新聞を買ったら、情報量が少なくて使えない。世間は私を鍛えてくれる。
<本日の物価、P=ルーブル、1ルーブルは4-5円>
カフェでエクレアとグレープフルーツジュース 280P
同 Wi-Fi利用料(2時間分のカード) 50P
鶏のシャシリクやトマトスープ、サラダなど 320P
絵葉書6枚 90P
切手 200P
トマトジュース(200ml) 8.35P
ミネラルウオーター(600ml) 19P
新聞トゥルード7 10P
コンセルヴァトーリヤと呼ばれるチャイコフスキー記念モスクワ音楽院大ホールの昼間のオペラを聴きに行ったが売り切れ。またか。しょうがないのでヴァイオリニスト庄司紗矢香の11月3日のコンサートチケットを買う。チケット売り場で「一番安いチケットを」と伝えたら、最後列近くとはいえ、日本円換算で750円。安すぎる。
音楽院にはホールが3つある。そのうち、ラフマニノフ・ホールの今夜の催しが6時から入場自由、8時からも入場自由とポスターに書いてある。「マスタークラスの…」と書いてあるから、マスターの学生の発表会か。8時からは「プロフェッサー…」と1人だけ名前が書いてあるから、教授のピアニストか。とにかく、6時に戻ってこよう、と決めて、街をぶらつく。
ラフマ� ��ノフ・ホール、午後6時。4列目中央に陣取ったが、雰囲気が変。教授陣十数人がずらりと並んで、あいさつして、若い学生から質問を受けている。質問者の若さからすると、入学者向けのオリエンテーションかもしれない。そのうち演奏が始まるだろうと思ったら延々1時間40分。8時からコンサート。ロビーには出演者のボリス・テブリンのCD。ジャケットには、あら? さきほど最初にあいさつした学部長のような人じゃないの。肩書きは「指揮者」。なんなんだ?
つまりは有名な合唱の指揮者らしい。で、指導しているマスタークラスの学生の発表会。プログラムに「コーラスの夕べ」とあった。がってんがってん。ホールは280席、客席に傾斜はない。内装は西欧の美術館のよう。窓もある。夜の帳が自然の暗幕と� ��り、その窓は室内のシャンデリアを映し出す。雰囲気満点。合唱団は女性24人、男性16人の計40人。基本はアカペラだが、ミュージカル仕立ての演出あり、国際コンクール入賞のソプラノ歌手スベトラーナ・アブザロヴァのゲスト出演あり。ピアノも交え、ピアソラの「プリマヴェーラ・ポルテナ」と「リベルタンゴ」では、これまた国際コンクール入賞のミハイル・ブルラコフのアコーディオン(バヤンと言うらしい)も登場。本編ラストはミュージカル「キャッツ」からのおなじみのナンバー。多少粗っぽいが、若さの勢い。堪能、喝采。
指差しをせずに、言葉だけで食事の注文をしてみようと、学食のような形式のレストランへ。「豚肉1つ? 2つ?」と聞くので、「2つ」と答えたら、1つ2個入りで4個も入って� ��た。レジで「それは?」と聞かれ、「きょうのスープ」と答えたら、まだなにか言っているので「きょうのスープはサワークリーム入り」と答えたら、「それじゃなくてこれよ」と、店員がサラダの皿を指差した。
地下鉄の排気口から吹き出してくる風は温かい。犬がよく、排気口に寝そべっている。きょうは人が寝そべっていた。それも複数の地域で。
きょうで夏時間終了。「28日午前2時に時計の針を1時間戻してください」と新聞に書いてある。日本との時差は1時間広がって6時間になる。
<本日の物価、P=ルーブル、1ルーブルは4-5円>
庄司紗也香のコンサートチケット 150P
サフランライスやスープ、トマトジュースなどランチ 393.5P
ノート5冊 80P
カフェでプーアール茶 125P
コンサート会場でボリス・テブリンのCD2枚組 150P
函館という文字が、やけに懐かしい。今年オープンしたモスクワ最大級の商業施設ロッテ・プラザの食料品売り場で、函館は五島軒のカレーに遭遇。レトルト1袋約1700円。おお、北見のハッカ飴もある。ビールは、エリセーエフスキーにもあった黒ラベル、スーパードライに加え、エビス、発泡酒の北海道生搾りも。同じサッポロビールなのに、ビールの黒ラベルより発泡酒の北海道生搾りのほうが高いのはなぜ?
同じフロアに、ついに回転寿司を発見。「すし曜日」という店名。カウンターではロシア人らしき女性二人組が食べていた。一皿1000円から? 回転寿司というシステムだけ導入して、コンセプトは導入しなかった、ということか。
いつもペットボトルの水を持ち歩く。スーパーに入るときは� ��にしまうようにしていたが、忘れてコートのポケットに入れたままロッテ・プラザの食料品売り場へ。売り場を出たところで警備員が声をかけてきた。「そのボトルは何か」。すらりとロシア語で出たね、「家の近くのスーパーで買ったんだ」。飲みかけだったこともあると思うが、すんなり解放してくれた。おお、なかなかやるじゃない、私も。
ロシア政府が来年1月末までパンや牛乳、卵など主要食料品の値上げ凍結を指示したという記事がきのうのコメルサントに載っていた。なのに、1週間ご無沙汰だったショッピングセンターの食堂の野菜焼きパスタが169ルーブルから179ルーブルに10ルーブル値上がりしていた。インフレおそるべし。
イタリア人のカルロは4週間の留学を終えた。最後のレッスンでは、カ ルロが買ってきたケーキをみんなで食べた。留学の初期をなんの不安もなく乗り切れたのは、カルロの存在が大きい。大学の食堂でカルロとラグビーの話をするのは楽しかった。ナイスガイ、カルロ、ありがとう。
<本日の物価、P=ルーブル、1ルーブルは4-5円>
絵葉書3枚 45P
野菜焼きパスタとミネラルウオーター 209P
「武士道とはなにか」。レッスン中にロシア語の先生が聞いてきた。えー、武士とはですねえ、切腹とは、潔さとは、新渡戸稲造とは、などといろいろ考えて説明する言葉を、先生はニヤニヤ笑って聞いている。渾身の説明を終えたら、先生曰く「簡単なことさ、日本のコーヒーだよ」。なぬ? メード・イン・ジャパンの「武士道」という日本のインスタントコーヒーが売られているという。
それを初めて確認したのが、1901年開業、モスクワ一の高級食料品店といわれる「エリセーエフスキー」。ホームステイ先の近所にある高級スーパー「ストックマン」と「シジモイ・コンティネント」は、日本で言えば紀伊国屋かクイーンズ伊勢丹だが、「エリセーエフスキー」は貴族が買い物していても違和感を覚えない� �あろうほど雰囲気のある内装と照明。日本にはない店の造りだ。
インスタントコーヒーの棚に日本語表示のネスカフェ、マキシム。かつ「武士道」。確かに、メード・イン・・・スイス! 日本の食品はほかにもあって、味噌、醤油は言うに及ばず、そば、うどん、そうめん、エバラ焼き肉のたれ、オタフクのとんかつソース、ミツカンすし酢と米酢、金印わさび、ビールの黒ラベルとスーパードライも。コーヒー豆もなぜかある。
帰国時の航空券を予約する。12月31日発、日本到着は1月1日。空の上で年を越す。
<本日の物価、P=ルーブル、1ルーブルは4-5円>
学食でスープやライス、煮たサケなどランチ 96.9P
コメルサント 16P
マックカフェでラテ 95P
グリンカ(1804-1857)は「ロシア国民音楽の父」と言われている。って、全然知らなかった。チャイコフスキーやラフマニノフだけじゃないんだね、ロシアは。そのグリンカの名前を冠したグリンカ中央音楽博物館は、世界の楽器や、ロシアの代表的な音楽家の自筆の楽譜など各種資料を収蔵している。小学校低学年とおぼしき子供たち十数人も見学に来ていた。まだ小さいのに、ちゃんと格変化させてロシア語をしゃべっているところがエライ。
1700年代のギターや1500年代のピアノの前身も興味深いが、ロシアの楽器と言えばバラライカ。バラライカにも大小あり、低音専門のバラライカや高音部を受け持つバラライカがあるようだ。バラライカを部品にばらした展示もある。世界各国の楽器の展� �は、さすがに中央アジアやウクライナなど旧ソ連各国の楽器が手厚い。日本からは、尺八、琴、三味線、太鼓、鈴、龍笛が展示されているが、この三味線。しみがにじんでぼろぼろ。だれか寄贈してくれないものか。アイヌ民族のトンコリやムックリ、沖縄の蛇皮線は展示されていない。
ロシアの音楽家の展示室。客はほかにいない。暇を持て余していると思われる学芸員のようなおばさんが近づいてきて説明してくれる。なにか答えなきゃいけないと思って、おばさんが「ムソルグスキー」と言ったので、「ああ、展覧会の絵の」と言ったら、そのおばさんの、なんとうれしそうなこと。しゃべる量とスピードが倍になった。おばさんはここが見所というところをどんどん案内してくれる。ロシア語の勉強にもなるし、ありがたい� �でも、もう少しゆっくり見たかった。